MY MEMORANDUM

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輝蹟の剣〈剣道部編〉 ❿

   第九章 武夷族襲来

 

        1

 

 閉会式を終えて帰り支度をしていた龍の傍に、ロッキーが竹刀袋を提げて嬉しそうに近寄ってきた。

「リュウ、これだよ。ベリー・スペシャルなグランパのプレゼント」

「えっ、食い物じゃなかったの」

「ノー、ノー」

 チッチッと人差し指を揺らし、茶目っけたっぷりなロッキー、どれどれと至も覗き込んできた。

「ハーイ、それではお披露目ねー」

 ロッキーは恭しく竹刀袋の中身を取り出したが、それを見た龍は腰を抜かさんばかりに驚いた。

「これは……輝蹟の剣!」

「えっ、そうなの?」

 初めて現物を目にする至が問いかけたので、「ああ」と頷いた龍は剣の鞘に改めて目をやった。

 深海を思わせる深い紫色の鞘には、亀と大蛇が組み合わされた生き物の彫刻が施されている。

「こいつは玄武の剣だ」

「グランパが骨董のオークションで手に入れたらしいけど、まさかこれがボクのところに送られてくるなんて……」

 興奮するロッキーに、龍も心臓が高鳴ってくるのを覚えると、玄武の剣への問いかけを試みた。

(玄武、教えてくれ。おまえはロッキーにキンコンカン……だよな、やっぱりそうだ)

 それにしても、夏樹邸の庭で見た朱雀と白虎、道場の床の間の青竜、これで四本の剣がすべて揃ったのではあるまいか。

 遥か遠い中国で生まれ、世界に散らばったとされたものが、こんなにも狭い地域に集まるとは。傭兆が語っていたように、剣同士が呼び合った結果、これは剣の意思だというのか……

「またおまえらか。何をコソコソしている」

 振り返ると、そこに翔がいた。いつぞやのデ・ジャ・ヴのようだ。

「ミスター夏樹、これを見て」

 控室の机の上に横たえられた剣を目にして、さすがの翔も顔色を変えた。

「まさか……」

 持ち主がロッキーだと判ると、

「そうか、アメリカのオハイオ州だったな。ならば、これで三本目か」

 すると龍はすっくと背筋を伸ばした。

「いや、剣は全部揃ったんだ」

「どういうことだ?」

「オレん家にあるんだよ。四本目の剣、青竜の剣がさ」

 初耳だったロッキーと至は同時に驚きの声を上げた。

「そういえば、牙門先輩が龍君の道場に家宝の刀みたいなものがないか訊きたいって言ってたけど、直後にあの三人が来てうやむやになっちゃったんだ」

「オー、シツネンしていたね。だったらリュウの道場に青竜があること、もうバレてるかもしれないんじゃ」

「オレもそう思う」

 その間、ずっと黙って何かを考えていた翔は「行くぞ」と命令した。

「行くって、どこへ?」

「おまえの家だ。青竜を拝ませろ」

「何だよ、厄介事はたくさんじゃなかったのかよ」

「事情が変わった。それに……早くしないと、おまえの祖父母が危ない」

「あの泰喬ってヤツか」

「それだけじゃない。とにかく急げ」

 

        2

 

 隠れ住んでいても食料は必要だ。

 買い出しを志願すると「わたくしも行きます」と華鈴が言った。

「いや、もしも武夷族に出会ったら……」

「その時は牙門さまがお守りくださればよいのです。白虎の剣士なのですから」

 許婚が伝説の勇者とあって、こんな状況にも関わらず華鈴は有頂天だった。

 言い出したらあとには引かない性格なのは承知している。仕方なく二人ででかけたものの、チャイナ服の背中に白い筒、珍妙な格好ながら美男美女のカップルは否でも人目を引く。

 商店街を行き交う人々にジロジロ見られたが、しばらくしてその擦れ違いざま、呼び止める者がいた。

「あれ、キミ、たしか常聖の剣道部じゃなかった? 今日は県大会だろ、デートなんかしてていいのかい?」

 牙門に声をかけたのは地区予選の時に話をした他校の生徒だった。牙門の連れが美少女なのが羨ましいのだろう、嫉妬めいた口ぶりである。

「ウチはとっくに負けたから県大会も何も関係ないけどさ。あ、そうそう、前にキミが訊いた、オレの友達が通っていた道場、春日道場っていうんだって」

 弾かれたように目を見開いた牙門は「そ、それで、その道場の場所は?」と急かす口調で尋ねた。

「えっと、たしか……」

 他校生に礼を述べると、牙門が足早に歩き始めたので、華鈴も急ぎ足になった。

「どうしましたの、牙門さま」

「シッ、静かに」

 ふと感じた殺気に、牙門は辺りを見回した。誰かが自分たちを見張っている。まさか、武夷族? 

 電柱の後ろ、看板の陰、黒い人影がこちらをジッと見つめていたような気がした──が、一瞬にして気配が消え、人影のようなものも見えなくなった。

(消えた、どうして?)

 さっきの会話を聞かれていたのでは、ならば会話に出てきた場所、武夷族は春日道場に向かったのでは? 

 考えがそこに行き着いて背筋が凍る。何らかの手を打つ前に、事態は急展開してしまったのだ。

 牙門は華鈴の方を向くと、

「華鈴、頼みがある。戻って皆に伝えて欲しい。春日道場というところに来てくれと。そこに輝蹟の剣があるはずだ」

「剣が?」

「間違いない。私の友の家なのだ」

「承知しました」

 先程聞いた住所を紙に書き記して華鈴に渡すと──傭兆たちは日本の地理に不案内なので、叔父に案内を請うためだ──牙門は一目散に走り出した。

 

        3

 

 これからとんでもない事が起きるとは露知らず、団兵は鼻歌を歌いながら縁側を歩いていた。

「今日も暑いのう……おっ、もう県大会も終わった頃じゃな。結果はどうなったものか」

 龍が全国大会の大舞台で活躍する様を想像して、団兵は相好を崩した。

 両親が海外赴任して十年になる。幼かった孫も中学生になった。むやみに母を恋しがらない、手のかからない子だった。

 身長と成績は伸び悩んでいるが、精神的には大きく成長し、頼もしくなった。きっとチームの中でも物怖じせず、みんなの太陽のような存在になっているだろう。

「……おや?」

 表の方から誰かが走り寄る足音が聞こえたかと思うと、チャイナ服姿の若者が息を切らしながら飛び込んできた。

「はて、入門希望者か」

 彼は団兵を見ると、勢い込んで尋ねた。

「春日龍君のお爺様ですか?」

「そうじゃが」

「失礼しました。私は龍君と同じ学校で友人の秋牙門と申します。突然で申し訳ありませんが、今すぐここから離れて、安全な場所に逃げてください!」

「なるほど、おぬしが牙門くんか。しかしまた、いきなり逃げろとは」

「ここにある輝蹟の剣を狙う者がやって来ます。彼らは武夷族といって……いや、そんな話はあとで。とにかく早く」

 急きたてる牙門の背後から「待テ」という声が聞こえたかと思うと、黒装束に身を包んだ十人ほどの屈強の男たちが道場を取り囲み、拳法を繰り出すような姿勢で身構えた。

「間に合わなかったか……とうとう姿を現したな!」

 忍者風の男たちは抑揚のない声で「剣ヲ渡セ」と言った。

「イヤだと言ったら?」

「殺ス」

 団兵を庇うように立った牙門は黒い男たちを見回した。

 独りで闘っても勝ち目はないかもしれない。だが、龍の祖父だけは何としても守らなくてはならない、この命に代えてもだ。

 牙門は凛とした声で叫んだ。

「ならば相手をしよう。我が名は秋牙門、白虎の剣士に選ばれし者だ!」

 背負っていた剣をはらりと抜くと、銀色の刃が煌めく。

「アレハ輝蹟ノ剣!」

 武夷族の男たちがおじけづいたように二、三歩後退りする。

 驚いた団兵は牙門が手にする白虎の剣を見つめた。白い鞘に虎の彫刻、青竜と同じ剣なのはすぐに解ったが、その中身は木刀ではなかった。いったいどういうわけか。

 牙門は今、白虎の剣士と名乗っていた。四本の剣にはそれぞれに選ばれた剣士がいるのだ。剣士ではない者が触れても木刀でしかないが──自分が青竜を抜いた時のように──選ばれた者が触れると真の刃となるのだと、団兵は理解した。

 ならば、ここにある青竜の剣、それに選ばれた者は誰なのか、想像にかたくない。

(あの剣が持ち主を求めていたのは解っていた。やはりそうか……)

 一瞬引いた武夷族だが、盛り返すように牙門に襲いかかってきた。彼らの手には白虎よりも一回り大きい剣が握られている。

 ウォーッと不気味な大声を上げて飛びかかる男たち、それを右に左にと素早くかわす牙門、道場の庭は戦場になっていた。

 敵の一人が団兵に襲いかかった。すかさず竹刀を構えて避けると、

「さすがですね」

「春日団兵、まだまだ若い者には負けはせんわい。そういうのが年寄りの冷や水だと、龍には叱られたがな」

 この場面でもこの発言、やはり龍の祖父である。二人は背中合わせになり、敵の動きに細心の注意を払いながらも会話を続けた。

「おぬし、白虎の剣士として選ばれたと申していたが」

「はい。それで青……」

「うむ、みなまで言わなくても判っておる。あとの二人もおそらく、おぬしの身近におることもな」

「そう思われますか?」

「考えてもみなさい。九州に渡った剣がこの狭い地域に集まってきたのじゃ、剣士も仲間として集まっていると考えるのが自然だと思わんか?」

 そこへ二つの影が武夷族の間を割って、こちら側にピタリとついた。

「牙門! 大丈夫か?」

「傭兆さん、泰喬!」

「何を手こずっているのだ、さっさとカタをつけろ」

 泰喬が相変わらずの憎まれ口をたたく。何しろ団兵は竹刀で応戦しているし、牙門も剣を使って殺人になってはと、手加減しているのだが、相手はおかまいなしに攻撃してくるからだ。

「まったく、こんなカスども、我がとっとと片づけてくれるわ!」

 とはいえ、武器を持たない──持っていたら通常の方法では入国できない──泰喬は例の気功の技で、傭兆も手持ちの木剣で闘うしかない。

 そうこうしているうちにも多勢に無勢、追い詰められて状況は不利になっていく。疲れのみえてきた牙門は容赦なく襲われ、次の瞬間、彼の白い肩が赤く染まった。

「……不覚!」

 かすむ目に門の向こうの人影が見える。それが誰なのか判ると、そちらに向かって牙門は叫んだ。

「危ない、逃げろっ!」

 

        4

 

「じいちゃん!」

 団兵は無事だが、駆け寄ろうとする龍を牙門が制止した。

「ここは私が……君たちを巻き込むわけにはいかない」

「フン、そうはいかなくなったようだ」

 こんな場面でも翔は冷静だ。

 剣術の心得のない至に門の外へ逃げるよう促したはいいが、数を増した武夷族が龍たち三人を取り囲んだ。

「牙門、こいつら何なんだ?」

「武夷族、輝蹟の剣を狙う者たちだ」

「……って、コレのことね?」

 ロッキーが竹刀袋から取り出した紫色に光る鞘、

「おおっ、あれは玄武!」

「アメリカから、まさか……」

 泰喬たちが声を上げる。敵も味方も呆気に取られたその隙に、団兵は床の間の剣を取ると「龍、受け取れっ!」と叫んで、孫を目がけて放り投げた。

「その剣を抜くのじゃ、龍!」

「じいちゃん、でも、これ」

「いいから早くっ!」

 龍が剣を抜いたその瞬間──青白く眩い輝きが空をも突き抜け、今ここに、青竜の剣が甦った。

 驚く龍に、団兵の声がさらに呼びかけた。

「闘え、龍! 青竜の剣士よ!」

「青竜の……剣士?」

 泰喬が現れた時に口にした「白虎の剣士」、それは白虎の剣を持って闘う者だと認識していた。そして今、白虎の剣を持って闘っているのは牙門だ。

 剣に選ばれる──それはキンコンカンならぬ、親近感を抱いた相手。青竜の剣はこの自分を、春日龍を青竜の剣士として認めてくれたのだ。

「よっしゃー、やってやる!」

 全身に不思議な力が湧いてくる。悪いヤツらと闘えと剣が励ましている。

「ロッキーも剣を抜けよ」

「ボクも?」

「おまえが玄武の剣士だからさ」

 深い水底から、飛沫を上げて現れた海大神を彷彿させる紫の光──玄武の復活だ。

「オー、グレイトッ!」

 青竜の剣を引っ提げたまま、目の前の出来事に動きの止まった武夷族の包囲を突破した龍は傭兆の背中の赤い筒から「ちょいと拝借」と言って朱雀の剣を取り出した。

「ほら、キャッチ!」

 久しぶりに手にする剣を見やり、

「やれやれ、こんな羽目になるとはな」

 とはいえ、彼は予期していたのだ。道場へ案内しろと言ったのはそのためだった。

 剣を武夷族の面に突きつけて悠々とそれを抜く翔、赤く燃えるプロミネンス、鋭い雄叫びを上げて鳳凰が羽ばたいた。

「朱雀……あの男が朱雀だったのか。それにあいつらが青竜と玄武……」

 泰喬は闘いの最中にも関わらず、ガックリと膝をついた。四本すべてに選ばれなかった悔しさと惨めさが彼を支配していた。

「やはりそうだったか……でも、やはり私はこんな闘いに彼らを巻き込みたくない」

 そう呟く牙門に、団兵は諭すように「龍たちはおぬしの仲間であろう」と言った。

「何もかも自分だけが背負い込んでしまって辛くはないのかな。窮地を助け合ってこそ本当の仲間、ましてや選ばれし四人の剣士は共に闘うのがさだめなのでは」

「お爺様、しかし」

「龍なら大丈夫、ワシの孫じゃからな」

「ありがとう……ございます」

 涙を拭い、気持ちを奮い立たせた牙門は剣を構え直すと、新たに参戦した三人の剣士たちと合流した。

「武夷族だっけ? たくさんいるねー。どうやって日本に来たのかな?」

「船で密入国したんじゃねーの」

「ミツニューコク?」

「横浜港、大桟橋あたりにつけて」

「あそこだと、すぐにみつかりそうだけど」

「じゃあ、由比ヶ浜か江の島」

 こんな場面でもお気楽な会話をするロッキーと龍に、翔の檄が飛ぶ。

「つまらん話をしている場合か。くるぞ」

 翔が上段からの片手技を相手にくらわせると、ロッキーは下段の構えから鉄壁の防御を築いて攻撃を寄せつけない。龍はといえば、対元城中戦で見せた、脇構えから踏み込んで右手で切る、あの技を決めた。

 だが、再開された闘いの中で、ようやく気を取り戻した泰喬が喚いた。

「チッ、こいつら、いくら攻撃しても手応えがないぞ」

 傭兆も同意して、

「何だかおかしな動きだ、まさか人間ではないのか?」

 顔を見合わす彼ら、殺気はあるのに生気はない。これだけの攻撃に対してダメージをまったくと言っていいほど受けていない。自分の意志がない操り人形のようだ。

「……そのとおり。操られているのじゃよ」

 どこからか不思議な声が聞こえてきた。

「こやつらには普通の攻撃では勝てぬ。輝蹟の剣士たちよ、心を合わせて、剣の力を使うのじゃ」

「剣の力? 心を合わせるとはいったい」

 すると龍が他の三人に言った。

「こいつらを倒したいって、そのまんま思えばいいんじゃねーの」

「そう上手くいくとは……」

「いいじゃん、やってみようぜ」

 真っ直ぐに剣を差し向けた龍、その剣先にロッキーが、牙門が、そして翔が己の剣先を合わせた。

 その場にいる全員が固唾を呑んで見守る中、剣の先には巨大な光の塊が生まれ、上空に舞い上がるや否や、大きく弾けた。

 すると、弾けた光の欠片に触れた武夷族たちは地獄の亡者のごとき叫びと共に、跡形もなく消え去った。

「……消えた」

 現実とは思えない光景に、誰もが茫然としている。

「オー、ファンタジックね」

「密入国しなくても入れるヤツらだったみたいだな」

 そこへ、深い緑色のマントを纏った小柄な老人がゆっくりとした足取りで現れた。

「長老様!」

「天盟様、どうしてここに?」

 牙門に泰喬と傭兆が駆け寄りひざまずく。

「ほほほ、まあ、いろいろあってな」

 門の向こうに隠れていた華鈴を手招き「道案内をしてもらったのじゃ」と言うと、彼女に続いて至もそろそろと中に入ってきた。

 天盟翁は一族を治める者にありがちな尊大な雰囲気がなく好々爺といった感じで、武夷族の不穏な動きに、自ら日本を訪れたという説明をした。

「それにしてもなぜ、あいつらは消えてしまったのですか?」

「あれは実体のある幻術、武夷族が得意とする術なのじゃ。だから普通に闘っても通用しない。幻術を破るには輝蹟の剣が持つ力を使う必要があったのじゃよ」

 そんな会話をこちらで聞きながら、龍はロッキーに囁いた。

「なあ、あのじいさん、偉いのかなあ。牙門たち、ペコペコしてるぜ」

「そうみたいね。影刃族のリーダーかも」

 噂をしているのが聞こえたのか、天盟はこちらを向くと、スタスタと歩み寄ってきた。

「やべっ」

 それから、その小さく暖かい手で、龍の手を握りしめた。

「青竜の剣士よ、よくぞ共に闘ってくれた。ありがとう」

「は、はあ、どうも」

 それからこの老人はロッキーと翔にも同様に呼びかけて彼らを労い、団兵にも礼を述べたあと、庭先を荒らしてしまったことを詫びた。

 そんな天盟の行動をイライラした顔で見ていた泰喬はとうとう我慢できないといった様子で詰め寄った。

「長老、我は納得できません。どうしてこの日本人やアメリカ人までが輝蹟の剣士なのですか? 影刃族に伝わる剣がなぜ……」

「控えろ、泰喬」

「傭兆、貴様はどうなんだ? 仮にも若長の身でありながら、四人の中に含まれないとは、情けないとは思わんのか!」

 天盟は慈愛に満ちた視線を向け、穏やかな口調で語った。

「泰喬よ、たしかにそなたの剣の腕は優れておる。だがな、それだけでは剣士として認められない。八百年近くもこの国に存在し続けた剣が選ぶとなれば、影刃族の者であろうとなかろうと、もう関係のないこと。どこの国の者であろうが、剣士としての資格がある者を選ぶ、剣の意思じゃ」

「……納得、できません」

 泰喬は口元を歪めて顔を背けた。その背中が震えている。彼のプライドはズタズタだった。

 それから、天盟は四人の若者の顔を交互に見比べた。

「彼らは立派な輝蹟の剣士じゃ。今の世に於いて剣士が復活したことは喜ばしい事この上ない。輝蹟の剣にはそれぞれ意味があり、果たす役目がある。青竜は切り裂く剣、朱雀は焼き尽くす剣、白虎は与える剣、玄武は蘇らせる剣、これらの意味するところが理解できた時こそ、そなたたちは剣の力をすべて引き出せるであろう」

 黙って話に聞き入っていた四人だが「難しくてよくわかんねーや」と龍が言ったため、ズッコケてしまった。

「あちゃー。もう、龍君ってば」

 シリアスかつカッコいい場面でこの発言、見守る至は頭を抱えた。

「ま、まあ、今すぐわからんでもよろしい」

 天盟は気を取り直すと、

「さて、これから本題に入る。わしが日本に来た一番の目的じゃが……」

                                 ……⓫に続く